Blenderであそんでみた

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プリンシプルBSDFでニス・ワックス塗りの作り方

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※記事製作時のバージョン:Blender2.91

 

プリンシプルBSDFで、いろいろな質感表現の方法を探っていくシリーズ。
第9回はニス・ワックス塗りのマテリアルの作り方です。

それ以外の用途としては、

  • リンゴなど果物の表面(天然ワックス)
  • 光沢のあるチョコレート(光沢剤)
  • タルトやケーキ、フルーツなどのゼリーコーティング(ナパージュ)
  • 陶器の釉薬

などの表現にも使えます。

 

これらはすべて、次のような状態です。

  • 物体の表面に薄い透過層が作られる
  • その透過層が少しだけ光を反射する

こういう表現はクリアコートで作ります。

 

クリアコート

クリアコートは、スペキュラーとは別に設定する、追加の反射です。
スペキュラーに比べてかなり反射率の低い、ほのかな反射・光沢になります。

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クリアコート

 

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スペキュラーとの反射具合の比較

 

「反射・光沢」という意味ではスペキュラーと同じ働きですが、次のように役割が異なります。

  • スペキュラー:下地の反射・光沢
  • クリアコート:ニスやワックスなどによる、下地の上に追加する弱い反射・光沢

実際の物質は2~5%の反射率(0.25~0.625のスペキュラー)を持つので、「スペキュラーを0にして、代わりにクリアコートだけで光沢を付ける」という使い方はNGです。

スペキュラーについての詳細は、こちらの記事を参照してください。

hainarashi.hatenablog.com

 

クリアコートの粗さ

クリアコートの光沢の鮮明さです。
下地部分の粗さ(ラフネス)とは別に設定できます。

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クリアコートの粗さ

0.0~0.1:塗りたてのニス・ワックス
0.2~0.4:くすんできたニス・ワックス
といったイメージです。

 

クリアコート法線

クリアコートのノーマルです。
通常は下地部分と同じノーマルを設定します。

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クリアコート法線

 

下の画像のように下地だけノーマルを設定すると、凹凸のある下地をコーティングで厚く覆ったような表現ができます。
ナパージュや釉薬などに応用できます。

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下地とクリアコートのノーマルは別々に設定できる

 

下地の設定について

クリアコートは、他のパラメーターによる制限を受けません。
下地の質感を金属・非金属・ガラス・SSS、その他何に設定しても、クリアコートを使うことができます。
※現実の物質で、下地がどんな材質であってもニスやワックスが塗れるのと同じ。

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いろいろな質感でクリアコート

 

クリアコートを使う時は、下地の状態を想定して粗さ(ラフネス)を設定します。
「荒れた下地にニス・ワックスの光沢だけが乗っている」状態を表現する場合は、粗さを上げて下地の反射・光沢を消します。

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荒れた下地にクリアコート

 

「磨き上げた下地に、保護剤としてニス・ワックスを塗る」という状態の場合は、粗さを低く設定します。
微妙な差ですが、クリアコートを追加した分、ちゃんと見た目に違いが出ます。

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磨いた下地にクリアコート

 

 

以上、ニス・ワックス塗りの作り方でした。

 

※添削・構成アドバイス:相方

 

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灰ならし (@hainarashi) | Twitter

 

使用した3Dモデル

マテリアルボールの3Dモデルはこちらからお借りしました。

Material ball in 3D-Coat - Download Free 3D model by 3d-coat (@3d-coat) [a6bdf1d] - Sketchfab is licensed under Creative Commons Attribution