Blenderであそんでみた

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本の見どころ紹介『Blender 質感・マテリアル設定実践テクニック』

私の書いた本が出ることになりました!
マイナビ出版から『Blender 質感・マテリアル設定実践テクニック』
2022年12月22日発売です。

そこで、amazonなどの商品紹介では伝えきれない本の内容と見どころ&ちょっとしたメイキング裏話を書こうと思います。

 

どんな本?

初心者~中級者向けのマテリアル入門書です。
コンセプトは「実用的な質感を作りながら、ノードの仕組みと基本テクニックが身につく本」。
実際に使えるマテリアルを作りながら、ノードの知識とテクニックが感覚的に身につくような構成を目指しました。

 

どんな内容?

Chapter1~Chapter4の四つの章に分かれています。
各Chapterの内容を、サンプル画像をお見せしながら紹介しましょう。

 

Chapter 1:マテリアルを作る準備

マテリアル作製に必要な基礎知識として、「マテリアルとは何か」、「ノードとは何か」、「シェーダーエディター(マテリアルの作製・編集を行う画面)の使い方」を説明します。

マテリアルを初めて使う人でも迷わないように、シェーダーエディター画面の切り替え方から、ノードの追加・接続などの基本操作まで、丁寧に解説しました。

『1-2:ノードってなんぞや?』では、ノードを大まかに3つに分類して、それぞれの性質と働きを説明しています。
この性質の違いを知っておくと、ノードの使い方やマテリアルの作り方が理解しやすくなるので、中級者の人にもオススメな部分です。

 

Chapter 2:基本的なマテリアルを作る

ここでは、質感作りの基本となる「プリンシプルBSDF」の使い方を説明しています。
実際にいろいろな質感(プラスチック製品、金属、ガラス、表面の凹凸表現)を作りながら、プリンシプルBSDFの中でも基本となる5つのパラメーターの働きと設定方法を解説します。

  • ベースカラー
  • メタリック
  • 粗さ
  • 伝播
  • ノーマル

基本的にはこのブログの『プリンシプルBSDFでいろいろな質感の作り方』をベースに、より分かりやすくなるよう、表現や画像などをリニューアルしています。

また『凹凸表現の作り方』では、ブログでは解説していない「バンプマッピングの設定方法」を説明しています。
初心者の人でも分かりやすいように、基本の設定方法を丁寧に書きました。
後のChapter3では応用を紹介していきます。

※凹凸表現をする方法にはバンプマッピングとノーマルマッピングがありますが、この本では汎用性の高いバンプマッピングに絞って使い方を説明しています。

 

Chapter 3:マテリアル設定テクニック

マテリアル作りは「シェーダー半分テクスチャ半分」です。
シェーダーに関しては、今はプリンシプルBSDFさえ使えば簡単にほとんどの質感を表現できます。
そこでこのChapterでは、テクスチャを使ってよりリアルな質感を作る基本テクニックを厳選して盛り込みました。

ここでは、15種類のマテリアルの作り方が実践できます。

  1. 重量感の作り方
  2. 色ムラの作り方
  3. くすみ・表面劣化の作り方
  4. ドロドロ汚れの作り方
  5. 錆びの作り方
  6. ひび割れの作り方
  7. レンガ・タイルの作り方
  8. アスファルトの作り方
  9. コンクリートの作り方
  10. コンクリートブロックの作り方
  11. 木目・木彫りの作り方
  12. フローリングの作り方
  13. 布の作り方
  14. 模様・柄の作り方
  15. マテリアルの合成の仕方

これらは、「作り方がシンプル」「ノード設定の基本テクニックを網羅できる」「いろいろなシーンで使える実用的なマテリアル」という条件で選びました。

 

このChapterではステップ・バイ・ステップで、ノードの追加・接続・パラメーター操作の各段階ごとに、どのように質感が変化していくかも含め、丁寧に解説しています。

ノードの機能や仕組みなどの説明が必要な部分は、さらに詳しい解説をつけています。

『15.マテリアルの合成の仕方』では、異なるマテリアルのノードツリーを組み合わせて、新しいマテリアルを作る方法を説明しています。
これができるようになると、「お手本から要素を拾い上げて、欲しいマテリアルを合成する」など、応用の幅が広がります。

 

Chapter 4:Appendix

補足説明の章です。
マテリアルの操作方法全般を詳解した「マテリアルデータの基本操作」、質感表現に影響する「EEVEEの透過・屈折の設定方法」「環境テクスチャの使い方」について説明します。

 

以上、内容紹介でした。

 

メイキング裏話

その1

最初に本の執筆のお誘いをいただいた時、引き受けるかどうか、かなり迷いました。
趣味のブログなら自分の好きなように書けばよく、また書き上げられなかったとしても問題ありません。
しかし本を書くとなると、売り物になるだけの内容で、最後まで書き上げる必要があり、それが自分にできるのか不安でした。
また、私はいろいろ遊んでいるうちに自然とマテリアルも使えるようになったタイプなので、初心者のつまづくポイントが分からず、どう書けば良いのかイメージがつかめませんでした。

最終的に、編集さんとのやりとりの中で「自分にとって当たり前な『マテリアルを作る感覚や手法』が、誰にとっても当たり前とは限らない」ということに気が付き、「自分にとってのマテリアル作りの基本」を形にするのはいいかもしれないと考え、執筆を引き受けてみることにしました。

まさかその後1年3ヶ月もかかるとは・・・


その2

執筆の最初の難関は、盛り込む情報の選別と、構成の練り込みでした。
当初、出版社からは「初心者向けシェーダー解説書」のような方向性で、ディフューズや光沢などのシェーダーノードを個別に解説する形を提案されました。

これについては私から、

  • 基本的な質感表現に使うシェーダーは、プリンシプルBSDFだけで充分
  • 質感作りのポイントは、テクスチャで変化をつける方法
  • 入門書として重要なのは「よく使うノード、基本として押さえておくべきノード」の種類と機能と使い方

と提言し、承諾してもらいました。

しかし書き始めの頃は、自分でも気づかないうちに「シェーダーノードの解説をしないと」という思い込みが働いてしまい、どうにも内容がまとまりませんでした。
結局ある程度書いたものを全部ボツにして、最初から構成をやり直し、執筆が軌道に乗るまで3ヶ月くらいかかりました。

 

なお、本とは別に「すべてのシェーダーノードの詳しい解説をまとめたい」という考えはあったので、現在noteで『Blenderシェーダーノード辞典』として書き進めています。


その3

ひとりで原稿を書いていると、自分で分かっている部分は、つい説明や手順を省きがちになってしまいます。
この点は相方に全面的に協力してもらい、チェック・手直しを繰り返しました。
それはもう厳しいチェックで、「初心者をなめるな!これじゃ分からん!」とビシバシ叩かれました。
こちらから頼んでおいてなんですが、険悪になったことも一度や二度ではなく・・・しかしお陰様で、自分で読み返しても「確かにこの方が読みやすいし解りやすいな」という内容になりました。
相方、いつもありがとう!

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【コメント from 相方】

「初心者なめんな!」は、その頃ちょうど私が無料お絵かきツールを使い始め、その公式マニュアルの使えなさに激怒して生まれたセリフです。
「分かる人が書かねばならないが、分かるがゆえに分からない人の感覚がわかってない文章が生まれる」というマニュアルのジレンマを、この本の作業と自分事のまったく同時進行で体験する羽目になっていました。

ところで実は私、Blenderに関しては初心者どころかユーザーですらありません。ブログの読者視点チェックを依頼されたばかりの頃は、単純に文章・レイアウトのツッコミ担当でした。
それがいつの間にやら、理工系の知識フル稼働で開発者視点まで担当しつつ、こんぐらがった知識をほぐし整頓し「で、本当にここで言いたい事は?」とか、毎日毎日アタマが煮えるような日々に。
それもこれも、灰ならしの「Blenderを使う人がもっと増えるといい」という情熱(?)が暴走しがちなせいなんですが(すぐ情報盛り盛りにしすぎる・・・)。

ともあれ、
少しでもユーザーフレンドリーな本になってたなら嬉しいです。

 

▼追記 from 相方
Blenderについて私が無知な分、プロのツッコミをバリバリ入れてくださったのが、担当の樋山さんです。
特に『1-2:ノードってなんぞや?』は、樋山さんがこういう記事があるといいと指摘してくださったそのまんまの題名になってます(笑)。
そもそも、樋山さんが灰ならしを発見してくださらなかったらこの本は誕生してませんし、その後の就職も有り得なかったでしょう。
本当、樋山さんにはいくら感謝してもし足りません!!本当に有り難う御座いました!!!

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その4

自分自身の覚え書きも兼ねて、本が出るまでの経緯をまとめてみました。

2021年10月初旬 本の執筆のお話をいただく
   11月初旬 打ち合わせ完了、執筆開始
   12月下旬 書き進めた原稿を一度全部ボツにする、構成練り直し
2022年1月初旬 新しい構成で書き始める
   6月中旬 原稿すべて完成、デザイナーによるレイアウト作業に入る
   8月下旬 レイアウトのチェック・修正開始
   11月中旬 レイアウトのチェック・修正完了
   12月22日 発売

思い返せば、編集さんの緊急入院や、コロナ禍でデザイナーさんの事務所の方が隔離処置になったり、いろいろありました。
担当の樋山さん、根気よくお付き合い頂きありがとうございました!

 

通販サイト

各種通販サイトから購入できます(電子書籍もあります)。
Amazon楽天のリンクはこちらからどうぞ。

 

本を読んだ感想や、改善が欲しい点などありましたら、今後の参考にしますので、ぜひお聞かせください。

 

以上、『Blender 質感・マテリアル設定実践テクニック』の紹介でした。

 

※本文添削・構成アドバイス:相方

 

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灰ならし (@hainarashi) | Twitter

 

使用した3Dモデル

マテリアルボールの3Dモデルはこちらからお借りしました。

Material ball in 3D-Coat - Download Free 3D model by 3d-coat (@3d-coat) [a6bdf1d] - Sketchfab is licensed under Creative Commons Attribution