※記事製作時のバージョン:Blender 2.93 , BlendLuxCore v2.6
LuxCoreRender(以下「LuxCore」と略)の使い方を手探りしていくシリーズ。
今回は薄膜干渉(はくまくかんしょう)の作り方です。
薄膜干渉って何?
油膜・シャボン玉・焼けた金属などの光沢が、見る角度によって虹色っぽく変化する現象です。
仕組みとしては「薄い膜の表面と裏面で反射した光が互いに干渉して、特定の波長の光を弱めたり強めたりする現象」となります。
【画像出典】
油膜・シャボン玉:薄膜干渉 - Wikipedia
車のマフラー:チタンマフラーの美しい焼き色の付け方とは? by 車選びドットコム
薄膜干渉の作り方
DisneyまたはGlassマテリアルで「Thin Film Coating(薄膜コーティング)」をONにすると、薄膜干渉が追加されます。
こちらはDisneyマテリアル。
※プリンシプルBSDFに相当するノードです。
こちらはGlassマテリアルです。
・・・初期状態ではなんだかどぎつい見た目になりますが、以下のパラメーターでディテールを調整します。
- Film Amount(薄膜の量)
- Film Thickness(薄膜の厚さ)
- Film IOR(薄膜の屈折率)
これらのパラメーターは「Thin Film Coating」がONの時だけノードに表示されます。
※「Film Amount」はDisneyマテリアルでのみ表示されます。
各パラメーターの働き
Film IOR
薄膜の屈折率です。
現実の数値を元に設定すると、リアルな見た目になります。
【参考値】
- シャボン玉:1.33
- 油膜:1.45
- 酸化鉄:2.42
- 酸化チタン:2.52
「焼けた金属」の薄膜干渉は加熱によって生じる金属の酸化膜が原因なので、元が鉄なら「酸化鉄」、元がチタンなら「酸化チタン」、というように設定します。
※現実の数値が分からない場合は、見た目が近そうな物質の数値で代用します。
Film Thickness
薄膜の厚さです。
「nm(ナノメートル)」単位で設定します。
※1nm=1/1,000μm(マイクロメートル)=1/1,000,000mm
現実の数値を元に設定するとリアルな見た目になる・・・はずなのですが、思ったような結果にならないこともあります。
現実の数値を参考にしつつ、画面上の見た目を元に調整するのが良いようです。
頂点ペイントやテクスチャなどを元にこの値を操作することで、薄膜干渉の模様の変化を表現できます。
※ここで使用している「Remap」ノードは、Cycles・EEVEEの「範囲マッピング」と同じ働きのノードです。
Film Amount(※Disneyマテリアルのみ)
元の質感の色に薄膜干渉の色をミックスする度合いです。
物理的な数値ではないので、画面上の見た目を元に好みで調整します。
設定範囲は「0~1」で、「0」にすると薄膜干渉の色が完全になくなります。
特に「メタリック」を「1」にして金属の質感を作る場合、薄膜干渉はかなりどぎつい色合いになるので、その見た目を調整するのに使います。
設定見本
いくつか設定見本を載せておきます。
自動車やバイクのマフラー(チタン製)の青い焼き色(ヒートグラデーション)
- ベースカラー R:0.542、G:0.497、B:0.449
- メタリック:1
- 粗さ:0.1
- Film Amount:0.95
- Film Thickness:0~70
- Film IOR:2.52
焼けた鉄
- ベースカラー R:0.56、G:0.57、B:0.58
- メタリック:1
- 粗さ:0.2
- Film Amount:1
- Film Thickness:0~65
- Film IOR:2.42
シャボン玉
- Film Thickness:100~200
- Film IOR:1.33
補足
Thin Film Coatingは、タマムシなどの昆虫の体色・CDの虹色・ビスマスの結晶など、構造色の表現にも使えます。
画像出典:構造色 - Wikipedia
構造色とは「色素や顔料ではなく、物質的な微細構造によって色が生じる現象」です。
薄膜干渉も構造色の一種ですが、他に「多層膜による干渉」「微細な溝・突起などによる干渉」などがあります。
以上、薄膜干渉の作り方でした。
次回はマテリアルの基礎についてまとめる予定です。
使用した3Dモデル
マテリアルボールの3Dモデルはこちらからお借りしました。
Material ball in 3D-Coat - Download Free 3D model by 3d-coat (@3d-coat) [a6bdf1d] - Sketchfab is licensed under Creative Commons Attribution
参考サイト