※記事製作時のバージョン:Blender2.92
プリンシプルBSDFで、いろいろな質感表現の方法を探っていくシリーズ。
第15回は異方性反射の使い方その2です。
今回の記事では異方性反射のもうひとつの代表格、ヘアライン加工の作り方を紹介します。
異方性反射の設定方法は、他のパラメーターに比べてかなり独特で、説明する内容も多くなります。
1回の記事ではまとめきれないので、次のように段階を踏みながら説明します。
(リンクから各記事にジャンプします)
- 旋盤加工の作り方
- ヘアライン加工の作り方(この記事)
- スピン加工の作り方
- 異方性反射の基礎知識
- 応用と補足と余談
ヘアライン加工とは?
金属の表面処理のひとつで、髪の毛のように細い線状のキズを、単一の方向につける仕上げ方法です。
- 重厚感や高級感を出す
- 不必要な映り込みや、強すぎる反射などを防ぐ
- キズや汚れが目立たなくなる
といった用途で、郵便受け、手すり、公園などの車止め(バリカー)、ドアの取っ手、サインプレートや表札、エレベーターの扉やパネル、エスカレーター、電車のドア、万年筆やボールペン、システムキッチン、業務用冷蔵庫・・・などなど、建築材料から日用品まで、幅広い金属製品の仕上げとして使われます。
ヘアライン加工の作り方
まず、次の設定で異方性反射に切り替えます。
- メタリック:1
- 異方性:1
次に、タンジェントノードをタンジェントにつなげます。
タンジェントノードは、タイプを「UVマップ」にします。
これで異方性反射が、ヘアライン加工によるハイライトに変化します。
さらにベースカラーとバンプマップで、ヘアラインのディテールを追加します。
これでヘアライン加工の完成です。
金属の色(ベースカラー)を変える場合は、RGBミックスノードの第1カラーを変更します。
ヘアラインディテールの細かさは、ノイズテクスチャのスケールで設定します。
また、バンプの強さはオブジェクトのサイズに合わせて調整します。
車止め(バリカー)の設定
同じ設定で、車止めのような曲面のヘアライン加工も作れます。
異方性反射の方向とヘアラインディテールの方向は、UVマップの座標軸に基づき、次のように設定されます。
- X(U)軸方向 ⇒ 異方性反射の方向(ハイライトが伸びる方向)
- Y(V)軸方向 ⇒ ヘアラインディテールの方向
これに合わせてUVを展開すれば、オブジェクトが曲面でも、異方性反射は正しく描画されます。
「ヘアラインディテールの方向をY(V)軸方向に合わせる」と意識してUVを展開すると、イメージしやすいです。
ベースカラー用のUVマップと面の向きがうまく整合しない場合は、異方性反射(ヘアライン)設定用のUVマップを別に設定します。
表札やネームプレートの設定
表札やネームプレートでは、普通、文字に対して横方向にヘアライン加工を入れます。
そのため、上の設定とは逆に
- X(U)軸方向 ⇒ ヘアラインディテールの方向
- Y(V)軸方向 ⇒ 異方性反射の方向(ハイライトが伸びる方向)
となるように、それぞれの向きを変える必要があります。
ヘアラインの方向を変えるには、次のように設定します。
- 異方性の回転:0.25
- ベクトル分離からの出力を Y にする
これで異方性反射とヘアラインディテール、どちらの向きも90°回転します。
この下地の上に文字を載せますが、2つの方法があります。
まず、下地の金属板部分と文字部分を別シェーダーで作り、シェーダーミックスノードでミックスする方法。
もうひとつは、文字部分をアルファ抜きした別オブジェクトで作り、下地のオブジェクトから少しだけ浮かせて配置する方法です。
※完全に重ねると、文字部分が正しく表示されません。
なぜ下地と文字を1つのシェーダーにまとめて設定しないのか?
それは、次のような不便さがあるためです。
- 下地と文字で設定を変更する項目が多いので、ノードツリーが煩雑になる
- 文字の縁に白い筋が発生する
この白い筋は、異方性のON・OFFをテクスチャで切り替える際、グレー部分(中間値)で発生する「アーティファクト(artifacts:画像の乱れ)」という現象です。
これが決定的に仕上がりを悪くするので、下地と文字は別々に設定した方が良いです。
いろいろな応用
模様の作り方
テクスチャを元に、縦横のヘアライン(異方性反射)を組み合わせて模様を作る方法です。
現実のヘアライン加工でこのように模様を作る手法があるかは分かりませんが、CG的にはいろいろと面白い使い方ができます。
下の画像のようにノードツリーを設定します。
この設定を使えば、テクスチャの白黒を元に、黒 ⇒ 縦 , 白 ⇒ 横 のヘアラインに変換されます。
グレーの部分は、明度に応じた斜めの角度になります。
写真やイラストなどのカラー画像を元にすることもできます。
各色の明るさに応じた角度のヘアラインに変換されます。
縦横ではなく、斜めを基調にする場合は、範囲マッピングの設定を変更します。
- 最小へ:0.125
- 最大へ:0.375
これで、黒 ⇒ -45° , 白 ⇒ 45° のヘアラインに変換されます。
もちろん、立体でも模様は付けられます。
細かい模様の場合、ヘアラインのディテールはほとんど見えなくなるので、省略してOKです。
ノードツリーも大幅に簡略化できます。
髪の毛の光沢(天使の輪)
ヘアライン加工と同じ設定で、キャラクターモデルの髪の毛の光沢(天使の輪)を作ることもできます。
次の2点に注意します。
- UV展開は、髪の毛の流れる方向をY(V)軸方向に揃える
- メタリックは 0.0 にする
以上、ヘアライン加工の作り方でした。
※添削・構成アドバイス:相方
お借りした素材
模様の元テクスチャ:
毘沙門亀甲文様の背景素材(PNG / Ai / EPS) | ULOCO
#和柄 フリー素材 和柄04 - 千のイラスト - pixiv
ミクさんの3Dモデル:
「Tda式初音ミク・アペンド」 / Tda さんの作品 - ニコニ立体
参考サイト
SilkArch on Twitter : エンジェルリングの出し方だよ