※記事製作時のバージョン:Blender3.2
プリンシプルBSDFで、いろいろな質感表現の方法を探っていくシリーズ。
第3回は金属のマテリアルの作り方です。
メタリック(Metallic)
普通の光沢と金属光沢を切り替えるパラメーターです。
「0」は普通の光沢、「1」で金属光沢になります。
金銀やステンレスなど「金属光沢のある金属」を作る場合は、メタリックを「1」にします。
「塗装された金属」「錆びた金属」「黒光りする金属」などの光沢は金属光沢ではないので、メタリックは「0」にします。
メタリックを0~1の中間の値にすると、普通の光沢と金属光沢とがミックスされた見た目になります。
現実の物質は基本的に「普通の光沢」か「金属光沢」のどちらかなので、メタリックも基本的に「0」か「1」のどちらかで使います。
なお、現実の物質には「普通の光沢」と「金属光沢」が混ざって見える状態もあります。
例えば「錆びかけ」「汚れかけ」「塗装の剥げかけ」「樹脂と金属の混合塗装」などがその状態です。
このような質感を作る場合は、画面上の見た目を元に感覚(好み)で判断して、「0~1の中間値の方がいい感じになる」と思ったら中間値を使います。
実際に中間値を使って設定するマテリアルの例としては、次のようなものがあります。
※各マテリアルの作り方はリンクを参照して下さい。
ベースカラー(Base Color)
下の一覧は、代表的な金属のベースカラーの見本です。
これは実際の金属の測定データに基づいた値で、ベースカラーをこの値に設定すると、実際の金属の色調が再現できます。
※データ出典:Physically Based Materials | Unreal Engine Documentation
なお、この一覧は純粋な実験材料の金属の測定データに基づいた値です。
金属の色は他元素の含有率や加工時の条件などで変わるので、「絶対この色にしなければならない」というものではありません。
まずはこの値に設定して、それからイメージに合わせて微調整をすると、実際の金属に近い色調が作りやすいです。
金属のベースカラーは、V(明度)を「0.465~1.0」の範囲で設定します。
これも、実際の金属の測定データに基づいた値の範囲です。
「0.465」より暗い色にすると、金属としては暗すぎる見た目になります。
ただし、これは絶対のルールではなく、「現実的な金属の色味」を作りたい場合の設定方法です。
現実にあるかは関係なく「こういう色味の金属が作りたい」というイメージがある場合は、この明度範囲は気にせず、自由に設定してOKです。
下の画像は、自由に設定してみた例です。
粗さ(ラフネス)
樹脂製品の作り方と同じく、「物体表面の粗さ」を操作するパラメーターです。
この値が小さいほどピカピカに、大きいほどモヤモヤした見た目になります。
イメージ的な目安は次のようになります。
- 0.0~0.1:新品のステンレスやクロムめっき
- 0.2~0.4:古びて表面が曇ってきたステンレス、または新しめのブリキ
- 0.4~0.5:新しめのアルミサッシ
- 0.6~0.8:古びたアルミサッシやブリキ
メタリック「1」と「0」の判断方法
最初に説明した通り、「金属光沢のある金属」を作る場合はメタリックを「1」、「塗装された金属」「錆びた金属」「黒光りする金属」などは金属光沢ではないのでメタリックを「0」にします。
では具体的に、どういうものが金属光沢で、どういうものが金属光沢ではないのか?
迷った時の判断方法です。
金属光沢がある
下の画像のようなものは明らかに金属光沢があるので、迷わずメタリック「1」です。
アルミ製のサッシやフェンスなどはツヤがないのでちょっと分かりにくいですが、金属光沢です。
そういう「ツヤのない金属光沢」は、「粗さ」の値を大きくして表現します。
材質としては金属なんだけど…
下の画像のような、金属製ではあるけど「金属光沢」なのかどうか、判断に迷うものは多いです。
このような場合はとりあえずメタリックを「1」にして、ベースカラーのV(明度)を「0.465」で設定してみます。
それで納得のいく色調が出せるなら金属のまま。
「光沢が強すぎる」または「もっと暗い色調にしたい」と感じたら、メタリックを「0」にします。
ちなみに、鋳鉄や銅像などは、だいたいメタリック「0」で作ります。
銃は、シルバーならばメタリック「1」、黒ならばメタリック「0」で作る感じです。
小技
プリンシプルBSDFとはちょっと話がずれますが、金属系の小技を2つ紹介します。
クロメート
金属の表面処理の一種で、単管パイプのクランプや、ボルト・ナットによく使われます。
見る角度によって変化する独特な色調ですが、レイヤーウェイトとカラーランプで作れます。
環境テクスチャ
金属が「金属らしく」見えるには、周囲の映り込みが重要です。
ワールドの背景設定が単色のままだと、映り込みに変化がないため、金属としては物足りない見た目になります。
背景に環境テクスチャを設定すると、映り込みの情報量が増えて、より金属らしく見えるようになります。
環境テクスチャの設定方法はネットですぐ見つかるので、ぜひ使ってみてください。
補足
金属は金属でも、下の画像のような質感は「異方性反射」で作ります。
異方性反射についての詳細は、こちらの記事を参照してください。
以上、金属の作り方でした。
※添削・構成アドバイス:相方
参考サイト
『THE COMPREHENSIVE PBR GUIDE Volume 1: The Theory of PBR by Allegor…
『THE COMPREHENSIVE PBR GUIDE – Vol. 2: Practical guidelines for creat…
DONTNOD Physically based rendering chart for Unreal Engine 4 | Sébastien Lagarde
Physically Based Materials | Unreal Engine Documentation
改訂履歴
2022年6月23日
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